2014-01-09
アダンのある風景
『ものをしっかり見つめながら・・・、ものから離れて見る。
そこに、ものの本質が見えてくる。』
「花」を創るとき、そんな風に「花」を見ている自分がいる。
とある料理店で見せられた一冊の画集。
その画家についての予備知識は、全くなかった。
その絵が見たい、その絵が描かれた土地と空気を肌で感じたい・・・。
ひとり初秋の奄美へ飛んだ。
観光シーズンの過ぎた島は、訪れる観光客も少なく、人とすれ違うこともほとんどなかった。
アダンのある海岸を歩いていた。斜陽の中、さとうきび畑が小金色に輝いていた。
五十歳で全てを捨て、新天地奄美に移住した孤高の画家田中一村。
彼の絵には、私たちの中に脈々と続く「美意識」を掻き立てる力強さと
彼の絵に対する哲学が今もなお息づいている。
一村の描いた風景は、写真以上にリアリティーがある。
絵を描くことも、花を創ることも、どこか似ていると思う。